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会長より

会長所感 次世代のリベラルアーツとしての理数工系科目(STEM)の開発と教育実践に向けて

科学技術が高度に発達した現代社会の市民としてその成果を享受するために、また科学技術に立脚する社会システムの維持やイノベーションの創出を盛んにするために、より高度な自然科学・数学・工学系(以下、「理数工系」と省略)分野の素養が求められている。しかし、現実にはこれらの分野に関して、高等教育において以下のような危機的状況が続いている。

  • 理工系分野に人材が集まらない。
  • 初等中等教育の理科・数学系(以下、理数系と省略)分野の教育水準は高いが、興味を持ってこれらの分野の学習を続ける生徒の割合が国際的に見て極端に低い。
  • 大学における理数工系分野の基礎教育が手薄になっている。
  • 中等教育の早期において理系と文系に別れる傾向が顕著になっている。
  • 中等教育の文系コースにおける理数系分野の教育水準が低い。
  • 文系の学士課程において数学的リテラシーの獲得を教育目標に設定している機関がほとんどない。

 

ひるがえって、世界の情勢を見ると、いま各国は新しい視点から理数工系教育の格段の強化をはかっている。特にアメリカでは、理数工系分野の教育に対する財政支援が積極的に行われている。単に学んだ内容だけではなく、それを課題の発見・分析・解決に応用できる力を身につけさせるためのSTEM(Science, Technology, Engineering, and Mathematics)運動に対しては、年間およそ30億ドル規模の予算が注がれており、その半分以上は高等教育に対してなされている。特に、理数工系分野と人文社会分野が連携した教育に関心が寄せられている。

わが国でも、初等・中等・高等教育のそれぞれにおいて、引き続き理数工系分野の教育に力が注がれているが、初等中等教育と高等教育の間には伝統的に断絶があり、しかもそれぞれのレベルにおいて専門(ディシプリン)の壁が高い。ディシプリン間のコミュニケーションが絶対的に不足しており、科目間の調整・融合が図られていない。初等中等教育においては、理数科目は受験科目としての重要性が強調されるあまり、その社会的意味や人文・社会科学分野との連携及び科目間相互の融合には注意が払われていない。高等教育においては、専門教育の視点からさらなる細分化が進んで、総合化とは逆の方向に向かっている。このままでは、理数工系分野を高等教育における「次世代のリベラルアーツ」ととらえて、より多くの人々に学んでもらおうという本学会の設立以来の願望は実現しそうもない。

一般教育運動に起源にもつ大学教育学会は、多くの理数工系分野を専門とする会員を擁し、それぞれが分野を越えたカリキュラムや授業の開発に対して意欲を持っている。また学会として、医療・福祉系など実学分野に適した教養教育のモデルを示すことが期待されているが、その中で理数工分野をどう位置づけるかは大きな課題である。さらに日本の大学の主力である工学などの実学分野そのものをリベラルアーツ化して、将来の学士課程の根幹に据えるという考えも出されている。それらを実現するために、約一年をかけて、以下のような内容を含むプロジェクトを準備することを広く会員に呼びかけたい。

  • 従来の分野の枠を拡げ、人文社会科学とも連携した広い視野を持つ理数工系各科目の開発
  • 従来の分野の枠を越えた“インテグレート科学”“インテグレート工学”の開発
  • 文系学生を想定した現代人に必須の数学リテラシー科目の開発
  • これらの科目の密着したアクティブラーニング手法の開発、及びSTEMの観点からのFDやプレFDの計画と実施                               

(2015.11.21 文責:小笠原正明)

(2015年11月28日(土)に岩手県立大学矢巾キャンパス大会議室で行われた2015年第4回理事会で提案されたもの)

事業報告会会長挨拶

大学教育学会は一般社団法人になることによって、そのガバナンスのあり方を大きく変えました。任意団体の時代には、議案は常任理事会、理事会と上がってきて、最終的には総会で決定することになっていました。いわば直接民主制を採用していたわけです。一方、一般社団法人においては経営に関することの多くは理事会に決定権がありますが、基本的なことについては代議員総会に決定権があります。その関係は、政府と国会の関係に例えられますので、間接民主制に変わったわけです。それでは、総会はどうなったかというと、名称が事業報告会に変わりました。この名称からも分かるように、ここで何かが審議され決定されるということはありません。

しかし、これは私見ですが、創設時代を除いて、総会が果たしてきた実質的な役割は基本的に変わっていません。私の知る限り、総会で具体的なことが審議され、採決によって可否を決定するということはありませんでした。それを行うには、会員が多すぎて、時間が少なすぎました。その代わり、執行部からの報告に対して、重大な問題についてはフロアから活発な意見の表明があり、それを多面的に議論したことが多くあります。そこでの議論は、直接的にはありませんが、本学会の方向に影響を与え、基本的には間違いのない方向を選択することに貢献したと思います。

今回の事業報告会は、一般社団法人としての第1回目の事業報告会ではありますが、会員がフロアで忌憚のない意見を交換するという、大学教育学会36年の伝統を継承していきたいと考えています。

このあと、任意団体の頃から引き続いて事業の報告がありますが、その成果のポイントは、
 1)法人化によって合法的な存在として社会的な位置づけがなされたこと
 2)事務局が、これまで特定の大学の好意のもとに保たれていた状態から脱して、独立したオフィスを持つことができたこと
 3)会費を含めて会員の制度を整理して、わかりやすいものに分類しなおしたこと
 4)ぎりぎりではあるが、法人としての経営見通しを持つことができたこと
の4点であります。

一方、いくつかの問題も浮上しております。
 1)大学教育学会のミッションをどのように設定するか、
 2)国際的な展開をどのようにはかるか、
 3)経営上の基盤をどのように確立するか、
などがその例です。

本事業報告会においては、このような問題点について、大所高所の立場から忌憚のないご意見をお聞かせ願います。

皆さまのご協力をお願いします。

(一般社団法人大学教育学会 会長 小笠原 正明)

(2015年6月6日、第36回大会が開かれた長崎大学の教養教育棟中部講堂にて、13時から開催された事業報告会における冒頭の挨拶)

一般社団法人大学教育学会 第1回代議員総会会長挨拶

一般社団法人大学教育学会の第1回代議員総会を開催するにあたり一言ご挨拶申し上げます。

先ほど開かれました、新旧合同の役員会・代議員会におきまして、一般教育学会時代から数えて36年の輝かしい歴史を持つ大学教育学会が、新生の一般社団法人大学教育学会へと円満に継承されたことをご報告します。これによって、本学会は新しいスタートラインについたことになります。

ここで法人化への経緯については改めて触れませんが、制度設計としては、一般教育学会から大学教育学会へと発展した歴史を十分に尊重し発展させながら、その精神を次の世代へと引き継ぐための制度の合理化を目指しました。その制度変更を象徴するものが、この代議員総会です。

定款によれば、代議員総会は、従来の総会に変わって、代議員制度による最終議決機関とされています。任意団体としての大学教育学会においては、最終議決機関として総会があり、執行機関として理事会があり、理事会のステアリングコミッティーとして常任理事会がありました。そこで執行に関する事柄は細大もらさず理事会決定とされており、その前には常任理事会による議題の整理が義務づけられていました。このシステムは、本学会の規模が小さいときには有効に機能していたのですが、次第に扱う範囲が広くなり、業務が複雑化するにつれて、二重審議の弊害が生じ、事務局の負担が限界を超えるようになりました。

一般社団法人においては、業務執行の責任は理事会に委ねられ、その監督・チェックが代議員総会の役目とされています。代議員総会の主な権限は定款では、
 1)定款を変更すること
 2)理事および監事を選任すること
 3)名誉会員を審査すること
 4)会員を除名すること
 5)監事を解任すること
などが定められていますが、定常的には、事業報告と決算を審査し承認すること、事業計画と予算を審議することがもっとも大きな仕事だと思います。すなわち、代議員総会は、本学会の年単位の方針について討論・審議し、決定することが期待されています。その役割はきわめて大きなものがあります。

なお、この4月まで設立時社員として、監事の関根、会長の小笠原、副会長の山内、事務局長の石渡の4名が準備活動に携わっておりましたが、4月1日の登記とともに55名の社員と合流しました。設立時社員の4人が、今日まで暫定的に監事および理事の役割を果たして来ましたが、この第1回の代議員総会において定款による最初の理事が選任されます。法人の一般法によりますと、理事は「代議員の議決によって選出される」とあります。議決とは、まず候補者リストが提出され、その候補者一人ひとりに対して投票を行うことです。候補者数が定員を超えている場合は、得票順に定員の21名の理事が決まりますが、定員を超えていない場合は信任投票となり、それぞれの候補者について過半数の賛成が必要です。今回はこの信任投票が行われます。

これからのスケジュールを申し上げますと、この代議員総会でいくつかの議案を審議したあと、理事選定の議決を行います。理事決定の直後に、代議員総会を一旦中断して、代表理事すなわち会長選出のための理事会を開きます。なお、法人の第1回理事会は先の暫定役員のもとで4月27日に開かれていますので、今回は第2回理事会になります。ここで会長選出のあと、懸案の議題を4つほど処理したあと、代議員総会を再開して、代表理事の選出結果を代議員総会に報告する段取りになっています。非常に、タイトなスケジュールではありますが、よろしく議事の運営にご協力下さるようお願い申しあげます。

(一般社団法人大学教育学会 会長 小笠原 正明)

(2015年6月5日、第36回大会が開かれた長崎大学の教育学部SCS棟にて、15時15分からから開催された第1回代議員総会における冒頭の挨拶)

新旧合同会議における会長挨拶

大学教育学会では、役員の交代期に伝統的に旧役員と新役員の合同会議を開いています。これには任期中の活動を総括して、次の役員に伝えて、問題意識を共有し、新しい学会活動の展開をはかるという意図があります。今回の場合、旧役員とは法人化前の理事を指し、新役員とは法人における代議員を指します。定款では代議員が役員ではなく「社員」と定義されていますが、この会議の目的に変化はありません。

ご存知の通り、昨年11月の臨時総会で、本会の法人移行が決定され、新しく定款が定められました。それまでのいきさつについては繰り返しませんが、大学教育学会の歴史、規模、社会的役割から考えて、法人化は必然であったと私は考えています。幸い、多くの方々の献身的な努力と会員のご理解のおかげで、時間はかかりましたが法人化準備は順調に進み、この4月1日に法人登記が行われて、本会は一般社団法人大学教育学会と名称を変えました。これで、大学教育学会は3月31日を持って解散・解消したことになります。また、長年の懸案であった事務局も、この6月に桜美林大学を出て、自前のオフィスを構えることができました。

それに先だって、定款と一般社団法人大学教育学会規則にもとづいて、2月から3月にかけて法人の代議員選挙が行われ、55名の代議員が選出されました。この定員は、会員約50人に1人の代議員に相当します。なお、設立時社員として、監事の関根、会長の小笠原、副会長の山内、事務局長の石渡の4名が準備活動に携わっておりましたが、4月1日の登記とともに55名の社員と合流するとともに、暫定的にこの4人が今日まで監事および理事の役割を果たして来ました。

次の段階として、理事の選出作業がありますが、これは合同会議の後に開催される第1回の代議員総会の主要な議案として設定されています。理事選定の直後に、代議員総会を一旦中断して、代表理事すなわち会長選出のための理事会を開きます。ここでは、会長選出のあと、懸案の議題を4つほど処理したあと、代議員総会を再開して、代表理事の選出結果を代議員総会に報告する段取りになっています。

この合同会議に対して暫定会長としてお願いしたいことは次の2点です。
 1)2014年度の事業報告・決算報告をご検討の上、3月31に位置に遡ってお認めいただきたいと思います。これによって、任意団体としての大学教育学会の経理内容が明らかになり、広く理解されることを期待しています。
 2)任意団体の「大学教育学会」の業務を「一般社団法人大学教育学会」が継承する件について、3月31日まで遡って追認していただきたいと思います。後先になって、心苦しいことではありますが、このことによって一般教育学会時代から数えれば36年の輝かしい歴史を持つ大学教育学会が新生の一般社団法人大学教育学会へと円満に継承され、さらに発展するためのスタートラインに立つことを期待します。

(一般社団法人大学教育学会 会長 小笠原 正明)

(2015年6月5日、第36回大会が開かれた長崎大学の教育学部SCS棟にて、14時から開催された新旧合同会議における冒頭の挨拶)