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大学教育研究入門講座

大学教育学会では、大学教員だけでなく、大学職員、大学院生など多様な会員に支えられ、キャリア形成上の多様化も進んでいますが、一方では、研究を進めていく上での、基礎あるいは発展のトレーニングを受けないままに、論文執筆や研究発表に取り組むケースも増加していると推察されます。

そこで新たな試みとして、大学教育研究入門講座を開催し、大学教育研究力の向上を目指すことになりました。第1回大学教育研究入門講座が2018年8月24日に開催されましたので、以下の通り、報告します。

■総括

今回、初めて、「大学教育研究力向上プロジェクト」の一環として、2018年8月24日に同志社大学において、寺崎昌男先生による「大学教育研究の理論と方法(1〜2)」と井下千以子先生、松下佳代先生による「研究論文の書き方(1~3)」の講座を午前・午後にかけて開講しました。

この講座を開講した背景については、「大学教育学会における会員のディシプリンの多様性に加えて、近年会員のキャリア形成上の多様化が進んでいます。そのため、自ら研究を進めていくうえでの、研究の基礎あるいは発展のトレーニングを受けないままに、論文執筆や研究発表に取り組むケースも増加しているようにも思われます。本講座シリーズは、多様な背景を持つ会員を対象に、大学教育研究入門講座を開講することで、基本的な研究の作法、研究論文の執筆方法、研究方法への入門等を受ける機会を提供し、会員の研究力向上を目指しています」と説明してきました。

当日は、前日に近畿地方に台風が到来したこともあり、開講できるかどうか心配いたしましたが、事前申込者のほとんどが参加してくださいました。また、年齢層も若手から中堅まで、職種も職員から教員と多様な層の方々が参加してくださいました。参加者の多くが大学院で学んだ経験を持ち、現在論文を執筆中である方も多かったことが印象的でした。多くの参加者が、「現在の仕事に関連した研究を継続したい」、あるいは「自分が受けた専門領域とは異なり、大学教育に関する論文を書きたい」といった希望を表明され、講座が終了しても講師の先生方に熱心に質問をされていました。この意味で、まさにこれまでの専門分野とは異なる「社会人の学びなおし」という意味が今回の大学教育研究力向上プロジェクトにはあったのではないかと思います。事後アンケートでも建設的なご意見をいただきました。そうしたご意見を参考にして、今後も会員のニーズに合わせた講座を引き続き提供していきたいと考えています。

(山田礼子)

■参加者から

○講座1:「大学教育研究の理論と方法(1〜2)」(講師:寺崎昌男先生)

 「-「改革のための研究方法」を考える-」と題された午前の講座では、寺崎昌男先生から「改革」を目指した大学研究の在り方についてお話いただきました。まず導入として、寺崎先生ご自身の経歴と併せて、「大学研究はありえない」と言われていた時代から、現在の「総合人間科学としての大学研究」に至るまでの戦後日本における「大学研究」の歴史をお話しいただきました。その後、カリキュラムについては、スコープやシーケンスといった基本的な考え方を、FD・SDについては、その基本的な性格やFD・SDに対する教職員の関わり方やカリキュラムのあり方について、ご教示いただきました。学部・学科の分化や改称については、歴史的な視点から、学問のあり方が変わってきたこと、真の社会的ニーズを見出す必要があることを語られ、講座のむすびとして、歴史を省み反省することの必要性、プロジェクト等を通して教職協働を推進する必要性をお話ししていただきました。

寺崎先生写真1

どのお話も重厚で非常に勉強になるお話でしたが、特に印象に残っているのが、「実践とその省察から、問題の発見、そして研究へつなげる」という大学教職員の大学研究への姿勢についてのお話で、将来、大学で働く者として、そして大学研究を進める者として、常に心に留めて置きたいお話でした。

 

 

○講座2:「研究論文の書き方(1~3)」(講師:井下千以子先生、松下佳代先生)

井下先生の講座では「研究論文の書き方」について、ノウハウやテクニックではなく、「なぜ、そういう書き方をするのか」をお話しいただきました。前半は「実証研究と文献研究」「量的研究と質的研究」「仮説検証型論文と仮説生成型論文」など、論文のタイプや研究方法の違いについての講義があり、後半は、受講者によるグループワーク(モデル論文の構成の分析)とそれを踏まえたデスカッションが行われました。松下先生の講座では、研究論文の中でも特に「『大学教育学会誌』に求められる水準」をお話しいただきました。『大学教育学会誌』の「査読についての内規」に示されている観点について、具体的な例とともに説明していただき、その後、松下先生が作成された論証モデルのご紹介とそれを使用したペアワークを行いました。

井下先生写真2

両先生の講座はどちらも、現在研究論文を執筆中の者として非常に参考となる内容で、特に、井下先生の講座で行った「モデル論文の構成の分析」では、研究論文の考え方・書き方に対する理解が深まりました。講座終了後の懇談会の時間には、「先行研究の乏しいテーマを研究するときの注意点」や「論文執筆者と査読者の研究手法が異なることによる問題点」について松下先生と受講者の間で意見の交換が積極的に行われ、受講者の研究・論文投稿に対する熱意を感じました。

 

(同志社大学大学院 竹永啓悟、小野魁己)